取材日:2019年3月4日
音楽、映画、アニメといったエンタメ業界を中心に、ARやVRなど最先端の技術を駆使したデジタルプロモーションを手がける株式会社シーエスレポーターズ。IT企業らしいとことん効率を重視した社風の反面、アナログな方法で開催される飲み会があると聞き、飲み方調査隊スタッフは同社の開発スタジオがある新潟へ。そこで同社が10年も続けているという「シャッフル飲み会」について取締役マネージャーの荻谷哲さんに話を聞いた。
今日は御社の「シャッフル飲み会」のお話をお聞かせいただけますか。
荻谷さん:「シャッフル飲み会」が始まったのは2010年。もう10年近く前ですね。当時はまだ社員が20名ほどしかいなかったのですが、当社のような開発や制作業務を主に手がけている会社では、どうしても日常的に関わるメンバーが固定化されてしまいがちです。制作と管理部署が業務上で関わることはめったにありませんし、現場もエンジニアとプランナーの3〜5名くらいのチームが基本なのですが、それもなんとなく決まったメンバーで集まってしまうことが多いんです。社員数が少しずつ増えていく中で、もっと色々な人と話せる機会をつくろうということで始まったのが「シャッフル飲み会」です。
どんな制度なのか詳しく教えていただけますか?
荻谷さん:頻度は2ヶ月に1回です。開催日に割り箸でつくったくじを社員全員に引いてもらって、当たった人が飲みにいくといういたってシンプルなルールなのですが、非常に効果を感じています。
割り箸というのがいいですね(笑)。人数は決まっていますか?
荻谷さん:IT会社なのに、めちゃくちゃアナログですよね(笑)。人数はマンツーマンでは話しづらいですし、3人だと部署を横断できない。あまりに多くてもちゃんと話せないので、一つの卓が囲めるくらいがいいよね、ということで社員5名とホスト役の中山(取締役社長)という構成に落ち着きました。くじなので同じ部署に固まるということもあり得ますが、今の所うまくバラけていますね。
くじに当たった方の反応はどうですか?
荻谷さん:ありがたいことに、「やった〜!」という感じです。新潟出身者が多いせいかみんなお酒好きなんですよ。それほどコミュニケーションがどうという感じではなく、シンプルに「やったー、飲み会だー!」という感覚だと思いますね。結果としていろんな人と交流できて活性化には繋がっているのですが。
具体的に、どんな効果を感じていらっしゃいますか?
荻谷さん:それぞれ他部署の人たちがどんなことをやっているのか興味を持つようになったと思います。普段接することのないところからの気づきって絶対にあるので、それはとてもいい傾向だと思います。そうやって視野が広がれば、日常の業務にも必ず活きてきますから。
ホスト役の中山社長がメンバーに、話してほしいことなどテーマを与えることもあるんでしょうか?
荻谷さん:特にないですね。話題は社員の自主性に任せています。シャッフル飲み会の他にランチ会というのもあって、そこでは僕がホスト役として入っているのですが、そこでも社員同士が自主的に最近どんなことしてるの?なんて話をしていますよ。
エンジニアと事務職の方など普段あまり接点のない人同士だと気づきも多そうですよね。一方で日頃一緒に仕事をしているメンバーでも、改めて話すことで距離が縮まることもあるのではないでしょうか。
荻谷さん:業務上の会話だとどうしても自分本位な見方をしてしまいがちですが、改めて飲み会などのフランクな場で話をすると、互いの理解が深まりますよね。「こういうところで苦労しているんだ」とか「こんなところにこだわってるんだ」とか。
エンジニアと営業とかだと結構ありそうですよね。
荻谷さん:うちはいわゆる営業というポジションはなく、あえて近いポジションでいうとプランナーという職種になるんですけど、それは本当にあります。どんな想いを持ってプロジェクトに取り組んでいるのか、普段ならなかなか伝わらない部分ですが、そこをお互いに理解した上で仕事ができれば、全然違ってきますよね。降ってくるものをこなすだけではただの作業ですし、いいものは決して生まれません。
うちの経営理念は「Making The Fan/Fun」なんですが、お客様にファンになってもらえること、そして自分たちがつくっているものの一番のファンであること。そして楽しむことです。だからこそ、意義や想いを共有するということは仕事をする上で必要不可欠なんです。
なるほど。確かにお互いの思いを理解すれば、伝達スピードやパフォーマンスは確実に向上しますよね。他にも何か効果を感じていることはありますか?
荻谷さん:シャッフル飲み会で初めてちゃんと話して、思っていたイメージと全然違ったとか、この人はこういうのが好きなんだという発見はもちろんありますよね。当社は普段チャットでやりとりすることが多いのですが、一度対面のコミュニケーションをしっかりとった後では、伝わり方がまったく変わります。直接話すことって本当に大切なんだなと思いますね。
ざっくばらんに話すことで、距離がぐっと縮まりますよね。それは飲み会のメリットだと思います。では、そういったカジュアルな会話から、何か新たに生まれたものはありますか?
荻谷さん:かなりありますよ。たとえば「ハピネス手当」という制度は、“こういう勉強がしたいから資料が欲しい”とか、“映画のプロモーションのプロジェクトがあるから映画が見たい”という飲み会での会話から「だったらそんなの会社が出すよ!」ということで始まりました。
幹部陣にとっても、みんながどんなことを考えているのかを知る機会なんですね。
荻谷さん:そうですね。「最近パソコンの動きが遅くて…」とかわざわざミーティングを設定して話すほどでもなくて、あとでいいやってスルーしちゃうようなことがポロッと、お酒を飲みながらでてくることが多いです。
趣味が同じことがわかって交流がはじまることもありますし、どういうことに興味があるということもわかっていれば、何かそれに関する案件が発生した時に声がかけやすいですよね。
確かに飲み会にはそういったポジティブな要素も多いと思いますが、最近では会社の飲み会に行きたくないという人が増えています。御社ではいかがでしょう?
荻谷さん:シャッフル飲み会の参加は決して無理強いしない、完全な自由参加ですが出席率はかなり高いです。言いやすい環境なので、いやいやきている人はいない…と思いたいところですがどうでしょうか。
やはり会社も、参加して欲しいのであれば、意味があるものだと捉えてもらえるように努力はしないといけないですよね。でも他の人と交流したくない人ってうちの会社にはいないと思いますし、代表とじっくり話せるいい機会なので、ポジティブに捉えてもらっているとは思っています。
代表自体もその場をとても大切にしていますし、今後もまだまだ続けていきたいですね。
今後、新たな制度の導入などの予定はありますか?
荻谷さん:今の所ないのですが、ランチ会が最近あまりできていないので、シャッフル飲み会と並行してこちらも開催していきたいです。
ありがとうございました。
回答者:株式会社シーエスレポーターズ フォローアップ 大関 健一
Q:初めてくじに当たったときのことを教えてください。
実は僕、初回で当たったんです。もう引いた時はよっしゃー!ですよ。シャッフル飲み会では、メンバーの中で一番若手が幹事をすることになっているのですが、僕はどうしてもカニが食べたくて…。
Q:そんなに予算がでるんですか?
いえ、一人3000円までです。カニは無理でしたが、みんなでゆっくり話せる落ち着いたお店を選びました。僕はコーディングなどをやる部署なのですが、その時は経理やVR、アプリ開発など、部署も年齢もバラバラの人が集まったので、すごく刺激になりました。
Q:どんな話をされましたか?
恋愛、結婚などのプライベートなことから技術的な話までいろいろです。あと、代表も参加しているので、自分が将来どういう風になりたいといった普段の業務ではなかなか話せないことも伝えることができました。
Q:シャッフル飲み会に参加した後、どんな変化がありましたか?
他部署の技術の話を聞くことで、考え方が広がりました。聞いた話を自分の業務に落とし込んで効率化に取り組んだりもしています。これまで接点のなかった人も、シャッフル飲み会で話すことでどんな知識を持っているかわかったので、困った時にアドバイスをもらいに行くなど、飲み会でできた縁はとても重宝しています。
Q:会社の飲み会に行きたくない若者が増えていますが、いかがですか?
まったくないですね。行きたいです(笑)。
Q:では今後もシャッフル飲み会は続いて欲しいということですね。
そうですね。ただ、あれ以来、くじにまったく当たらないんです。なんとか、2回目の参加を叶えたいですね。
取材ご協力企業:株式会社シーエスレポーターズ
インタビュアー:
和谷 尚美(N.plus)
米国の大学を卒業後、現地の出版社に編集者として入社。帰国後、広告代理店や制作会社を経て、2012年よりフリーランスライターとして活動。
http://nplus-w.com/