飲み会を楽しみながら
人づくりとチームワークを
促進する3つのアイデア

進和建設工業株式会社

堺市を中心に建築を軸とする幅広い事業を展開する進和建設工業では、社員の「人間力」や「価値観」を高めるための取り組みや制度に力を注いでおり、その一環としてお酒を介したイベントも多く実施されている。今回は、単なる「飲み会」で終わらない独自の運営方法とその効果について社長の西田芳明氏と広報室長の荒川和葉さんにお話しいただいた。

おいしいお酒と料理も仕事の一環。
高級レストランで開催される社長コンパ

御社には「社長コンパ」「誕生日会」「飲み歩き会」など、社員が集まってお酒を飲む機会が多いですよね。

西田社長:そうですね。私は会社というのはただお金をかせぐだけではなく、“人づくり”をする場所だと考えています。こういったイベントは、単なるお酒を飲んで楽しもうというだけではなく、人づくりを基本にしていて、それぞれに違う目的があります。

では今回は「社長コンパ」を中心にお話を伺いたいと思います。まず社長コンパとはどんなイベントなのでしょうか。

西田社長:私は長年、盛和塾で経営について学んできたのですが、盛和塾ではコンパが頻繁に開かれます。コンパというのはいわゆる飲み会なのですが、盛和塾のコンパは、お酒を通して世代や役職を超えた人同士の触れ合いやチームワークが形成される場になっているので、それを当社に落とし込めないかと考えて始めたのが社長コンパです。
 基本的に私が社員に伝えたいことを伝えることが目的なのですが、一方的に話すのではなく、参加者にあらかじめテーマを与えて、それぞれがインプットしてきたことを話し合ってもらいます。そこで新しい気づきを得たり、価値観の共有を通して強いチームワークが生まれています。

※盛和塾:京セラ株式会社の創業者であり、名誉会長の稲盛和夫氏が塾長を務める起業家のための経営塾

どのように運営されているんですか?

荒川さん:社長コンパの特徴は3つあります。まず参加者は各部署からランダムに選ばれること。だいたい5〜8名です。2つめに開催場所は居酒屋ではなく、普段私たちがとても行けないような高級レストランだということ。そして3つめは、「あらかじめ与えられたテーマがある」ということです。おいしい料理とお酒を楽しみながら、テーマについて話し合うのが社長コンパの基本です。

西田社長:テーマについて話すといっても、自分のやりたいことや意見を出す場ではありません。たとえば“社風”というテーマだと、自分は今ある社風に沿った行動ができているのか、社風の存在価値ってなんだろうというようなことを考えますよね。そのように考えてきたことや自分なりに出した結論を共有する場なんです。

社内ではなく、あえて高級レストランを選ぶ理由とは?

西田社長:日常の延長では普段の朝礼や会議と一緒になってしまいますし、やっぱりお酒は潤滑油ですよね。参加メンバーは社歴もバラバラなので、話しやすい雰囲気というのは必要だと思います。あと、どうせ食べるならおいしいものを食べたい(笑)。以前のコンパでは滋賀県に近江牛を食べに行ったりもしましたよ。社員が喜んでくれるのもうれしいですね。

場所は社長が選ばれるんですか?

西田社長:そうですね。一流といわれる店で食事をするという経験は、人としてのレベルを上げると思うんです。だからなるべく、普段行かないような高級店を選ぶようにしています。あと、できれば円卓、なければ小さめのテーブルにぎゅっと集まって話すことにこだわっています。大きな長テーブルではコミュニケーションがとりづらくてダメですね。

社長と社員が近い距離で語り合う。
それが価値観の共有、ひいてはチームワークにつながる

荒川さんは参加してみて、どんな気づきがありましたか?

荒川さん:私のときは、場所は豪華なフレンチレストランで、テーマは“社風”でした。社長コンパに参加して一番大きな気づきは、自分と社長の考えの差です。社長はこう考えているから、こういう言動になっていたんだという感じで、改めて腹落ちしたというか。おいしい食事とお酒で和やかな雰囲気なので、たとえよく理解できないことがあっても“社長それってどういうことですか”と、すぐに聞けて、納得いくまで話すことができるのは社長コンパならではだと思います。

社長自身はこのコンパで変化はありましたか?

西田社長:すごくありました。コンパ以前にもいろいろなことを伝えてきたのですが、理解してもらっていないこともあったようで、それに気づいていなかったんです。コンパを通じて、社員が“わかってない”ということがわかりました。あとは伝わりやすい言葉の組み立て方についても意識するようになりました。

社員の変化はいかがでしょう?

西田社長:チームやプロジェクトを見ていると一体感が生まれてきたように思います。やはりコンパを通して理念や価値観といった方向性が揃ってきたのではないでしょうか。

荒川さん:そうですね。私が入社した時はすでにコンパがはじまって随分経っていましたが、やはり当社のチーム力の強さはコンパで築かれている部分も大きいと感じています。コンパはやって終わりではなく、その後、参加メンバーが集まって改めてテーマについて深掘りをするんです。それによってより深く落とし込めているのではないでしょうか。

後日、「コンパ新聞」で社内に内容が共有される。

グチは飲み会ではなく、昼間に会社で言えばいい。

「飲み歩き会」はいわゆる普通の飲み会なんですか?

西田社長:そうですね。ガス抜きという感じで仕事の話はあまりしません。その代わりグチだったり悩みを言い合うこともないんです。悩みは昼間にシラフで話した方が絶対にいい。お酒を飲まないと言えないようなことは言わなくていいんですよ。

なるほど。お酒は潤滑油にもなる反面、勢いで余計なことまで吐露してしまうこともありますもんね。

西田社長:いい面もあるんですけどね。例えばうちの誕生日会では、両親への感謝の手紙を読んでもらうんですが、みんな照れてしまうので酒の力を借りてますよ(笑)。

荒川さん:親にその手紙を渡したら、親も照れてました(笑)

西田社長:でも親に対する感謝の念を持ってもらえると私もうれしいです。コンパの目的が考え方や価値観の共有なら、誕生日会は自分や相手の心を震わせるということですね。

今後は新しい制度やイベントは考えていらっしゃいますか?

西田社長:クラブ活動が今動き出していますが、すでにさまざまな取り組みがありますので、目下のところはそれをしっかり運営していこうと思っています。

ありがとうございました。

社員インタビュー

回答者:進和建設工業株式会社 営業部 奥島 輝也

Q:初めて社長コンパに参加した時の感想を教えてください。

まず「社長とこんなに近い距離感で話ができるんだ」と、驚きました。じっくり話をさせていただいたのですが、コンパ中は一社員というよりも、一人の人間として接してもらえていることを感じました。

Q:社長コンパに参加して、何か変化はありましたか?

朝礼や会議でわかっていたつもりでしたが、コンパを通してさらに社長の考えを深く知ることで、その後の行動に変化があったと感じています。
また、日頃交流のない他部署のメンバーと話すことで、これまでとは違う視点が持てるようになりました。

Q:社長コンパで印象的だったことを教えてください。

鍋を囲んで社員と社長がわきあいあいと笑顔で話しているのが、印象的でした。深い話はしますが、社長がこのような雰囲気をつくってくださることで、参加者がざっくばらんに発言できるのがコンパの醍醐味だと思います。

Q:他にこんな制度があったらいいなと思うものがあれば教えてください。

社会科見学などもっとたくさんの社員が参加できる制度やイベントがあればいいなと思います。社員の特技や趣味をビジネスに活かせる場をつくりたいです。

取材ご協力企業:進和建設工業株式会社

http://www.e-shinwa.net/

インタビュアー:
和谷 尚美(N.plus)

米国の大学を卒業後、現地の出版社に編集者として入社。帰国後、広告代理店や制作会社を経て、2012年よりフリーランスライターとして活動。
http://nplus-w.com/

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