参加を強制するのはナンセンス。
自分の時間は自由に使う。
それがぼくらのスタイル。

株式会社カオナビ

「社員の顔と名前が一致しない」。そんな多くの企業が直面する課題を、顔写真を利用したシンプルで使いやすい人材管理のプラットフォームで解決する株式会社カオナビ。同社のサービスを導入している企業は1100社を超え、2年連続で人材管理システム市場シェアナンバーワンを獲得。2019年3月には上場も果たし、今まさにノリに乗っているベンチャー企業だ。効率化を重視し、残業がほぼないことでも注目されている同社では、一体どんな飲み会が行われているのか。執行役員の藤田豪人さんに話を伺った。

社内の「言える化」を促進する、またぎ飲み

2014年で約10名、2016年で約50名、2018年に約140名とすごいスピードで組織が拡大していますが、それに伴いコミュニケーションのあり方やイベントの運営方法などに変化はありますか。

藤田さん:当社はベンチャーにしては社内イベントが少なくて、全社の恒例イベントとしては年に一度、忘年会がある程度です。あとは部署やプロジェクト単位では飲み会などを行っていますが、これといって変化はないように感じています。

意図的にイベントを少なくされているのですか?

藤田さん:家庭の都合で参加できない人や、そういう場自体が苦手な人、お酒が飲めない人などいろんな人がいるので、参加義務を感じてしまうような社内イベントは最小限にして、各自の裁量に任せるようにしています。当社は残業がほぼないので、仲のいいメンバー同士であらかじめ計画して、飲みに行っている人は多いですね。

「またぎ飲み制度」というのはその流れから生まれたんですか?

藤田さん:元々のきっかけは、従業員が増加するにつれて他部署とのコミュニケーションがとりにくくなったことです。仕事を進める上で、他部署との連携が必要になってくるシーンは多々あります。他部署と関わりやすい環境を提供することで、仕事でも円滑にコミュニケーションが取れることを期待し、この制度ができました。そのため、参加メンバーが部署をまたいだ場合、またいだ部署が多いほど会社から補助金がでる仕組みです。

全く接点のない人をいきなり誘ったりできるものでしょうか。

藤田さん:みんな普通に誘えていますね。制度も理由にしやすいのだと思います。またぐ部署が多いほど補助金が増えますから、結果的に5〜6部署の社員が集まることが多いようです。ただ、またぎ飲みの狙いは、お酒を飲んでみんなで仲良くしようねということではありません。私たちは意見やアイデアを「言える化」することをとても大切に考えているので、またぎ飲みで関係性をつくって、言える化を促進することが狙いです。

課題が見えればすぐにブラッシュアップ
新たな試みもスタート。

なるほど。お話を伺っているととてもいい制度だと思うのですが、一旦この制度は終了されるんですよね?なにか問題があったのでしょうか。

藤田さん:元々コミュニケーションが円滑な従業員同士での利用が増えてしまい、当初の制度目的と利用実態がずれてきてしまったためです。一度ブラッシュアップが必要だなと思いました。

どのように変更するかは決まっているのですか?

藤田さん:検討中ですが、またぎ飲みに代わる“ヨリアイ”というのはすでに始まっていますね。

それは、どういった制度でしょうか。

藤田さん:色々な部署から何かしらの共通点のあるメンバーを人事がピックアップして、ランチコースを食べながらコミュニケーションをとる、というものです。例えば出身地だったり、趣味だったり…。そういう人事のデータベースはうちの得意とするところですから、自社でも『カオナビ』を活用しながら人選を行っています。初回は社長を含む「北海道出身者」が集まるヨリアイでした。

藤田さんも参加されたことはあるんですか?

藤田さん:私の時は「料理好き」でしたね。僕は元料理人なので。毎日料理をしている主婦の方や料理が好きという社員を集めた会でした。最終的にトピックは完全に違うものになっていましたけどね(笑)。でもそれでも目的は達成しているのでいいことだと思っています。

ヨリアイは強制参加なんですね。

藤田さん:業務の一環とみなした制度ですからね。
一方で冒頭でもお話しした通り、社内イベントはほぼありませんし、唯一の忘年会も一切強制ではありません。自分の時間は好きに使って欲しいですしね。うちはオンオフがかなりはっきりしていて、業務時間外のイベントを強制するのはナンセンスという考え方をしています。

ちなみに藤田さん個人は会社の飲み会って必要だと思いますか?

藤田さん:必ずしも必要ではないと思っていますが、内容によりますね。何かしらのテーマを軸に飲みながら話して気づきを得たり、課題解決につながるようなものならいいと思います。
あと、先ほどの「言える化」という事に関しても、効果があると思います。何か考えを誰かに伝えるためには話を論理立てて、整理してからでないといけませんよね。それを繰り返すことでロジカルシンキングが身につきますが、そうはいってもまったく接点のない人に、いきなり話すのはやはり勇気がいります。そこで飲み会やヨリアイみたいな場で心理的距離を近づけておくというのは意味があるのではないでしょうか。

ありがとうございました。

社員インタビュー

回答者:株式会社カオナビ コーポレート本部広報・採用グループ 松下唯

松下さんはご入社何年目ですか?

松下さん:PR会社から転職してきて、今1年目です。

「会社の飲み会」についてどんなイメージをお持ちですか?

松下さん:カオナビでは、飲み会の時は特に、部下に気を遣わせないように振る舞っていただける上司が多いです。そのため、上司との飲み会もフラットに楽しく参加できるなという印象を持っています。

またぎ飲みは利用されていますか?

松下さん:またぎ飲みは一人あたり月一回使える制度ですが、私はほぼ毎月使っています(笑)。最初声をかけていただいた時は、広報ということもあり“みんなのパーソナリティを知りたい”という気持ちで参加したのがきっかけだったのですが、実際に行ったら思った以上に楽しくて。今は幹事をすることもあります。

どのようにメンバーを集めるんですか。

松下さん:またぎ飲みの最中に、話したことのない方の名前があがることも多いので、新しい人をどんどん誘い広がっている形ですね。結果的に10名くらいになることもあります。

かなりまたぎ飲みを活用されていますが、一番のメリットはどこにあると思いますか?

松下さん:藤田も申していましたが、一番のメリットは一緒に飲んだ機会があることで心理的な距離が縮まりやすくなることだと思います。

では松下さんにとっては、またぎ飲みは存続してほしい制度なんですね。

松下さん:そうですね。広報という職種柄、他部署と連携をとることが多いので、話しやすい方が増えたことはとても助かりました。あとは、本来の目的からはそれますが、私自身他部署で仲のいい方は、話したきっかけがまたぎ飲みだったことも多かったんです。入社して間もない時期でも気軽に話せる存在ができたのはとてもありがたかったですし、これもまたぎ飲みがあったおかげだなと思っています。
補足ですが、他部署に仲間のいる組織は他部署に仲間がいない組織と比べると離職率が低いという話を聞いたことがあります。エンゲージメント向上の意味合いでも、ルールを改定して存続できればいいなと思いますね。

ありがとうございました。

取材ご協力企業:株式会社カオナビ

https://corp.kaonavi.jp/

インタビュアー:
和谷 尚美(N.plus)

米国の大学を卒業後、現地の出版社に編集者として入社。帰国後、広告代理店や制作会社を経て、2012年よりフリーランスライターとして活動。
http://nplus-w.com/

飲み方調査隊 一覧