葉石かおり インタビュー 葉石かおり インタビュー

全国の清酒蔵、本格焼酎・泡盛蔵を巡り、酒にまつわるコラムの執筆や書籍を出版し注目を集めるエッセイスト/酒ジャーナリストの葉石かおりさん。2017年に出版した「酒好き医師が教える 最高の飲み方」では、医師や専門家への取材や研究データを元に、健康に酒を楽しむ方法を提唱し、話題を呼んだ。現在は、「日本酒を国酒から、国際酒へ!」というコンセプトの下、一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立し、理事を務める彼女に、健康に長く酒を楽しむ飲み方を聞いた。

医学的見地を基に、
酒の魅力とリスクを正しく楽しく伝える。

「酒好き医師が教える 最高の飲み方」読ませていただきました。最新医学のエビデンスを基に、身体への影響から二日酔い対策、セルフケア、酒にまつわるうんちくなど、かなり盛りだくさんの内容で、非常に興味深かったです。第二弾の出版が決まっているとのことですが、人ごとながらネタ切れが心配です(笑)。

葉石さん:二冊目も医師や専門家に取材をして医学的な見地を軸とした内容ですが、次はより医学にフォーカスしたものになる予定です。

いまの時代、ネットでちょっと調べただけでたくさんの情報が出てきますが、それが正しいかどうかはわかりませんよね。だから、医学的なアプローチで書かれたものだと安心して読めます。もちろん、医療といってもさまざまな見解があるんでしょうけど。

葉石さん:私も(医療の)専門家ではありませんので、医学を軸にしつつ小難しくならないように、私のような素人でも楽しく読めるということにこだわりました。世の中で信じられていることが実は間違っていることも多くて、私も取材をしながら学ぶことが多いです。たとえばお酒を飲むと血糖値は上がるか、下がるかどっちだと思います?

う〜ん、お酒の種類によるような気がします。一般的にビールや日本酒は血糖値を上げると言われていますよね。

葉石さん:ですよね。でも実は、すべてのアルコールに血糖値を下げる作用があります。そういったあまり知られていないことを、医師の見解を取材したり、文献やデータを通して正しく伝えられたらいいなと思っています。

本にはお酒を飲むのが怖くなるような事実も書かれていますね。

葉石さん:そうですね。お酒ってとても楽しいしおいしいけど、それだけではなく現実的にリスクがあるということも伝えたくて。
お酒は少量なら健康にいいと言われていますが、少量であろうがやっぱり体に毒なんです。骨粗鬆症とか痴ほう、肝臓や脂肪肝を引き起こしたり、ガンのリスクも上がります。そういった、ネガティブな面も知った上で、飲むことが大事かなと思いますね。

葉石かおり葉石かおり

正しい飲み方のポイントは、酒量と水と油物

葉石さんはどのようなことに気をつけて飲んでいますか?

葉石さん:お酒の魅力を広める立場だからこそ、健康でいなくてはと思っているのでストイックに酒量を守っていますね。

やはり重要なのは量ですか?

葉石さん:そうですね。先ほどもお話ししましたが、少量の飲酒は体に良いとされてきましたが、必ずしもそうでないということが調査でわかっています。あと、ちゃんぽんすると悪酔いすると思っている人は多いですが、いろいろな種類のお酒を飲む=量をたくさん飲んでいるということなので、ちゃんぽんが問題なのではなく、やはり量なんですよ。

酒量を守っているというお話でしたが、普段はどのくらいの量を飲まれるんですか?

葉石さん:家だと日本酒を1合くらい。週に2〜3日は休肝日にしています。もちろん外ではもっと飲みますが、その代わり家では節制しています。

量の他に気をつけていることはありますか?

葉石さん:血中アルコール濃度をできるだけ薄めるためにお酒と一緒に必ず水を飲みます。あと、お酒には抗利尿ホルモンの抑制作用があるので、飲むとどうしてもトイレが近くなって、脱水症状を引き起こします。その脱水症状が悪酔いや二日酔い、翌日の口渇の原因になるので、お水は必須ですね。

お酒をオーダーする度にお水も頼むんですか?

葉石さん:私ははじめからピッチャーでもらっています(笑)。
あと、空腹状態だとお酒が胃を通過して、ダイレクトに小腸にいってしまうので、空きっ腹では飲まないようにしています。小腸って繊毛を広げると男性の場合だとテニスコート一面分くらいあって、そこにお酒が入るとどんどん吸収して血中アルコール濃度が急激に上昇してしまうんです。できるだけ胃での滞留時間を長くするために、胃の中に何かを入れておくことは重要なポイントです。

では、運動やサウナに入ったあと、何も食べずに喉がカラカラの状態でビールを一気に飲むとか…。

葉石さん:絶対ダメです。気持ちいいし美味しいのはわかりますけど、本当に危険。私も昔はやっていましたけどね(笑)。

葉石かおり葉石かおり

飲む前に食べるものは何がオススメですか?

葉石さん:唐揚げとかカルパッチョとか、油を使っているものがいいですね。あとは繊維質の多いもの。食事と一緒にゆっくり時間をかけて飲むのが、悪酔いや二日酔い予防に有効です。とくに短時間でたくさん飲むのは本当にダメ。だから飲み放題って危険なんですよ。

どうしても時間内にできるだけたくさん飲もうとしてしまいますもんね。

葉石さん:そうなんです。気持ちはわかりますけどね(笑)。大学生を対象に、飲み放題と一般的な飲み会でどれくらい飲酒量が変わるか調べた研究があるのですが、飲み放題では通常の1.8倍の量を飲むというデータが出ています。倍近くですよね。学生さんだから顕著だったということもありますが、人間の心理として「あと10分で終了です」って言われたら「じゃあもう一杯」って急いで飲んじゃいますよね。

ポイントはお腹に何か入れてから、ゆっくり時間をかけて飲むということですね。サプリやドリンク剤などは有効ですか?

葉石さん:食事に行くときは必ず飲んでいます。飲んだ翌日、早朝から出張にでかけることも少なくないので、できるだけお酒を残したくないんです。決してたくさん飲むためではなく翌日、フラットな状態で過ごせるように活用しています。

飲み方改革」はいかがでしたか?

葉石さん:飲み会の最中にはそこまで実感はなかったのですが、翌日の胃腸の調子がとてもいいと思いました。私はお腹がとても弱いので、腸内環境を整えてくれているのを実感しましたね。

葉石かおり葉石かおり

お酒は酔うものではなく、味わうもの。
おいしい食事と楽しい仲間と飲むのが一番。

ありがとうございます。では、ここからは「飲み会」について聞かせてください。最近、会社の飲み会に行きたくないという人が増えていることに関して、どう思われますか?

葉石さん:飲めない人に無理に飲ませるのはアルハラですし、行きたくない人を強制的に連れて行くのも反対です。ただ、私個人としては、バブル時代にとても楽しい思いをしたということもあって、お酒はすごくいいコミュニケーションツールだと思っています。今まであまり話したことがない人と、飲み会で話すことで共通項が見つかったり、距離が近くなったり、人と人とをつなぐ役割はすごく大きいと思うので、飲み会自体は全然悪いと思ってないです。
飲めない人も今はいろんなソフトドリンクがあるし、選択肢も広がっているので、参加したほうがプラスになるんじゃないかな。どうせなら楽しんだ方がいいじゃないですか。

お酒がコミュニケーションツールになるということは理解できますが、職場の人とそこまでコミュニケーションを取る必要がないと考える人もいるようです。

葉石さん:今の若い世代にはそこまで付き合えないと思う人も多いと思うので、無理強いはできないですけど、中には飲み会大好きな若者もいるので、千差万別ですよね。いろんなパターンがあっていいんじゃないのかな。要は強制しないことだと思います。

そうですよね。でも世の中には昭和的な飲み会文化が残る企業もまだ多いようです。

葉石さん:お金と時間と気を使って、得るものがなければ私だって行きたくないです。今はフリーランスなので、好きな人としか飲みに行かないので楽しい飲み会しかないですけど、もちろん昔はしんどい飲み会もありましたよ。全然リラックスできないような(笑)。

どういう飲み会ならいいと思いますか?

葉石さん:まず、自分の話ばっかりする人って見苦しいですよね。自慢とかグチとかひたすら一人で話している人。お酒の席ではみんなが聞き上手になるべきだと思います。あとは、喋っていない人がいたら、話を振ったり、一部の人しかわからない話じゃなくて、全員が参加できる話題を心がけるとか。

最初はできていてもお酒が入ると、それができなくなる人もいますよね。

葉石さん:そうなんです。お酒ってすごく本性がでるんですよね。私、すごい見てますもん(笑)。あと人の悪口とかゴシップばっかり言う人もいやですね。お酒がまずくなります。それともう一つは正体を無くすまで飲むのはよくない。トイレにこもっちゃったり。

葉石かおり葉石かおり

やはりそれには自分の適量を知ることですよね。「酒好き医師が教える 最高の飲み方」にも、アルコールの適正タイプがわかるパッチテストについて書かれていますね。

葉石さん:はい。細かくやると9タイプに分かれるんですけど、どのタイプなのか特定することで、自分の体質に合った飲み方ができるのでおすすめですよ。

遺伝子的に弱くても、飲んでいるうちに強くなったという人もいますよね。

葉石さん:確かにそれはあります。でも体質的に強いわけではないので、気をつけないといけません。

なるほど。では、葉石さんのお酒に対する信条を教えていただけますか。

葉石さん:50歳を過ぎて、お酒って酔うものではなく、味わうものだと思うようになりました。楽しんで味わって、前向きな話を仲間としながら飲むのが一番ですね。

今後のビジョンはありますか?

葉石さん:ジャパン・サケ・アソシエーションはまだまだ小さい組織なので、もっと広げていきたいです。今年ようやく、講師育成セミナーがスタートしたので、日本酒や焼酎の魅力を世界にどんどん発信していきたいですね。あとは本をいろんな人に読んでもらうことで、お酒のメリットとデメリットを同時に知ってもらって、健康に楽しんでもらえたらうれしいです。

本日は、どうもありがとうございました。

葉石さんと飲み方改革実行委員会

聞き手:井澤 博(宣伝ファクトリー)/ 和谷 尚美(N.plus) 
文:和谷 尚美(N.plus)
取材日:2019年10月8日

葉石かおり

葉石かおり

エッセイスト / 酒ジャーナリスト / 一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション 理事長。ラジオレポーター、女性週刊誌記者を経て現職。2005年「おひとりさま向上委員会」代表時に流行語大賞にノミネート。2012年より松尾大社(京都)「酒ー1グランプリ」の実行委員長も務める。

ジャパン・サケ・アソシエーション

松尾大社 酒 ー1グランプリ

葉石かおりオフィシャルサイト

飲み方改革スペシャル 一覧

PAGE
TOPへ