小林一行氏 インタビュー 小林一行氏 インタビュー

大手電機メーカーでエンジニアとして活躍するも、仕事と人間関係の悩みから鬱を発症し、ストレスで過食癖を併発した経験から、メンタルとダイエットを組み合わせた独自の「ダイエットセラピー」を開発した小林一行さん。今回はダイエットだけではなく、企業や団体に向けてリーダーシップやメンタルヘルスについての研修も行なっている小林さんに、「健全な飲み会」とはどうあるべきかを聞いた。

「お前は会社のガンだ」
飲み会でも続いた上司からの叱責

小林さんは某大手電機メーカーのエンジニアだったんですよね。当時の飲み会はどんな感じでしたか?

小林さん:若手の頃は普通に楽しく飲んでいましたが、30代に入って、現場を離れてマネジメントをするようになってから仕事がうまくいかなくなって、飲み会もあまり楽しくなくなっていきました。

現場からマネジメントというと、いわゆる昇進ですよね。

小林さん:そうなんですけど、私はもともとモノづくりが好きでそこにやりがいを感じているタイプだったので、人の管理は不得意でした。当時は人付き合いも苦手だったので、うまくマネジメントができず、上司から毎日のように叱責されるようになって。

マネジメントしている部下ではなく、上司とうまくいかなかったということですか。

小林さん:そうですね。彼は人を管理する能力に長けていて、自分のやり方に絶対的な自信があったんです。実際に成果が出ているんだから、俺と同じやり方でやればいいと言われるんですけど、私にはできなくて。飲み会でも「お前は会社のガンだ」なんて言われたりしました。

いわゆるパワハラですか?

小林さん:当時はパワハラなんて言葉はありませんでしたが、それに近いものがあったと思います。そういう状況が2年くらい続いて、そのうち会社に行こうとすると動悸がしたり、どんどん体調が悪くなって、会社に行けなくなりました。

小林一行氏小林一行氏

診断された病名は「パニック障害」
自殺願望を抱えて過ごす日々

朝起き上がれない、ということですか?

小林さん:いえ、朝普通に家を出て、そのまま図書館や本屋に一日中いました。夜も眠れないし、これはもうだめだと思って病院に行ったら「パニック障害」と診断されました。

病名を言われたときはどう思われましたか?

小林さん:もう本当にギリギリの精神状態だったので、薬を飲めば治ると言われて少しホッとしましたね。でも正直、自分は社会の落ちこぼれになってしまったと思いました。

今のようにメンタルヘルスに対する理解がそこまでなかった時代ですもんね。それで薬を飲んで症状は良くなったんでしょうか。

小林さん:それがなかなか難しくて。抗うつの薬を飲むと元気になりすぎて、逆に躁状態を抑える薬を飲むと深く落ち込むといったアップダウンの激しい状態が続きました。たとえば、電話でなにか気に入らないことを言われると、怒鳴って叩き切ったり、妻が待ち合わせに遅れてきただけで怒り狂ったり、渋滞にハマると「俺が急いでいるのになんで渋滞してるんだ!」って反対車線を走ろうとしてしまったり…。

元々そういう性格ではないですよね。

小林さん:まったく違います。そんな感じで病院に行ってもよくなるどころか、どんどん悪くなっていきました。夜は睡眠導入剤を飲むんですけど、3時間くらいで薬が切れて目が覚めるんです。そうするとなんというか血が煮えたぎるような、なんとも不快な感覚になって、それを収めるために甘いものを食べるようになりました。毎日大きなチョコレートとかクッキーを大量に食べて、半年ほどであっという間に体重が10キロ以上増えました。

突然、性格も体型も激変したら周囲の人は驚いたんじゃないですか。

小林さん:会社の人は気がついていたかもしれませんが、面と向かって何か言われることはなかったですね。でも妻はとても心配してくれていたと思います。一時はもう死んでしまおうと遺書も書きましたし、練炭と七輪も買いました。それに気づいた妻が捨てて、また私が買ってということを繰り返していました。

実行するまではいかなかったんですね。

小林さん:そこまで用意すると不思議と「いつでも死ねるから今じゃなくてもいい」って思えるんですよね。むしろそれが心の支えになっていました。でも一度だけ、行動に移そうとしたことがあります。妻に気づかれて止められたんですが、その時、もし彼女が「なんでそんなことするの!」って怒ったら強引にでも振り切って決行していたと思います。でも彼女は「なにもできなくていい、いてくれるだけでいいから帰ろう」って言ってくれたんです。

奥様の愛を感じますね。そこから回復に向かったんですか?

小林さん:すぐにではないです。それから図書館で心理学や自己啓発などの本をたくさん読むようになったのですが、ある日妻から勧められた本田健さんの本に深い感銘を受けて、「この人に会いたい」と思うようになりました。それで、セミナーに行くと、前向きな仲間が増えて少しずつ元気になっていきました。

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夢中になることを見つけることで
少しずつ見えてきた光

本田健さんの本のどんなところに感銘を受けたんでしょう。

小林さん:一番は、自分の人生のテーマにもなっている「せっかく生まれてきたんだから好きなことをやろうよ」というメッセージです。自分が好きなことってなんだろうって考えた時、やっぱりモノづくりだったんです。子供の頃から何かものを作るときはいつも夢中になっていて、受験で一番大切な高3の夏休みでさえ、パソコンを自作して1ヶ月すぎてしまったくらいですから(笑)。
そのモノづくりが好きだという原点を思い出して、ラジコン飛行機をつくり初めて、気がついたら回復していたんです。夜中にお菓子を食べることもなく、自然に5キロ痩せました。

そこからダイエットを始めるわけですね。

小林さん:はい。(過食を)やめなきゃ、やめなきゃと思っているときは、なかなかやめられないですし、そんな自分を責めてしまって悪循環なんですよ。でも、なにかに夢中になっていれば、食べていないことにすら気がつかなくて「なんで5キロ痩せたんだろう」って理由がわかりませんでしたから。

夢中になることを見つけることで、心身ともに健康を取り戻したんですね。

小林さん:そうですね。今、企業研修などもさせてもらっていますが、大切なのは一人一人がやりがいを持って仕事を楽しむことが何よりも大事だということをお伝えしています。残業が多くて鬱になったという話がよくありますが、もちろん過度な残業は絶対にやるべきではないですが、多少仕事が忙しくてもその仕事が好きでやりがいがあれば、そこまで悪くはならないと思うんですよね。もし、本当につらくて、苦しいなら逃げてもいいんです。私は当時、逃げた自分を責めてしまってさらに病状が悪化しましたが、長い目で見れば一旦休むというのも一つの手段ですから、自分を責める必要はないんですよ。

小林さんの鬱は上司とのコミュニケーションがうまくいかなかったことがきっかけでしたが、企業研修ではコミュニケーションのあり方なども指導されているのですか?

小林さん:そうですね。コミュニケーション研修では上司から部下への接し方が一番のポイントだと思っています。社長とか組織というよりも、現場でのマネジメントの仕方を丁寧にお話するようにしています。

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飲み会に仕事を持ち込むべからず。
上司の接し方次第で飲み会は楽しくなる。

例えばコミュニケーションを円滑にするために飲みに行くというのは有効だと思いますか?

小林さん:私は飲み会で否定されて鬱になったこともありますし、逆に心を通わせて楽しく飲んだこともあります。両方を経験して思うのは、飲み会という場所に仕事の話を持ち込んで説教なんてしたら絶対にダメってことです。仕事を離れてできるだけ対等な立場で話すことと、趣味だったり休みの日の過ごし方を聞いたりして、部下の仕事とは別の面を見てあげることです。自分の得意なことや好きなことを話せば、自己肯定感も高まるし、心理的な距離もグッと近づきます。ただ、仕事しか生きがいがなかったり、自己肯定感の低い上司だと、仕事以外の話ができなかったり、仕事の延長線上で偉そうに上からものを言ってしまうんですよね。

プライベートな話を聞くと嫌がられたりしませんか?異性の場合だと下手したらセクハラなんて言われたりもしそうです。

小林さん:最初に嫌なら答えなくていいよと伝えることは大切ですね。あとは自己開示。自分の話を先にすると話しやすくなると思います。プライベートな話に抵抗があるなら、仕事の失敗談なんかを話すといいですよね。武勇伝ではなく失敗談。弱みを見せると距離は縮まりますから、そこから入ることで自然と打ち解けてくれるようになりますよ。やっぱりまずは上司が部下に興味をもつこと。相手がどんな人なのかを知る機会になればいいですよね。

ちなみに小林さんはダイエットの本を出されていますが、ビールを飲んでも太らないってほんとですか?

小林さん:私はファーストオーダーに野菜、きのこ、海藻を食べて、血糖値が急激に上がらないようにしています。あとビールジョッキ一杯飲んでも糖質はせいぜいお寿司のシャリ1個分くらいですから、最初の一杯を無理に我慢する必要はないんじゃないですかね。

ビールってすごい糖質が高いイメージでした。

小林さん:ですよね。意外と低いんです。もちろん5杯も6杯も飲んだらダメですけど。
唐揚げだって1〜2個くらいなら問題ないですよ。

ダイエットも仕事もストイックになリ過ぎない方がいいんですね。

小林さん:そうです。目標を明確にしてモチベーションを高く持つことは大切ですが、仕事もダイエットもストイックになりすぎると苦しくなる。多くの成功者たちに共通しているのは、目標は非常に高いけど日々やることはすごく小さい。できることを淡々と続ければ、いつかは目標にたどり着くんです。夢の実現は何も明日じゃなくていいんですから。

そうですよね。モチベーションがめちゃくちゃ上がりました!
今日はどうもありがとうございました。

小林一行さん

聞き手:井澤 博(宣伝ファクトリー)/ 和谷 尚美(N.plus) 
文:和谷 尚美(N.plus)
取材日:2019年8月26日

小林 一行

小林 一行

日本メンタルダイエット協会代表 チーフメンタルダイエットコーチ / 健康経営アドバイザー / 国際メンタルセラピスト協会 認定メンタルセラピスト / 日本ダイエット健康協会 認定インストラクター

小林一行 公式サイト

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