僕らが飲み会に行かない理由 僕らが飲み会に行かない理由

新卒入社1年〜4年目の会社員 32人に会社の飲み会についてのインタビューを実施し、若者が会社の飲み会を嫌う理由を徹底的に調査・分析した「若者飲み会学」が 2018年にAmazon Kindleで出版された。その著者「黒咲仁」とは、某大手企業に勤める会社員2人。多くの若者がいやいやながらも会社の飲み会に参加する現状に物申す二人に、会社の飲み会における課題とあるべき姿について、現役若手会社員の視点から赤裸々に語っていただいた。

*現役会社員のため、顔出しNGです。ご了承ください。

若者飲み会学: 若者が会社の飲み会を嫌う理由

若者飲み会学
若者が会社の飲み会を嫌う理由
Kindle版
黒咲 仁(著)

会社の飲み会が楽しくないのは自分だけ?
きっかけはそんな疑問だった。

まずは共著で本を書き始めたきっかけについて教えてください。

F さん:僕らはもともと中学からの友人なのですが、大学でも同じサークルに入っていて、そこでは飲み会にも頻繁に参加していました。なので、飲み会自体は好きな方だったのですが、社会人になったらなぜか楽しくなくなってきて。
学生時代はあんなに楽しかったのになぜなんだろう、こんなにつまらないと思っているのはもしかしたら自分だけなのかという疑問から、話し始めたことがそもそものきっかけですね。

K さん:僕たちは新卒入社で自分の会社のことしか知らなかったので、他の会社ってどうなんだろうというところから、会社の飲み会についていろんな人と話すようになって、案外同じように思っている人もいることがわかりました。それで、これを本にしたらどうかってことになったんです。

F さん:それと、僕とKくんは仕事のスタイルが似ていて、よく平日の夜に会って飲んでいたんですけど、他の友達は仕事とか会社での付き合いが忙しくてだんだん疎遠になって、それがさみしかったんです。
SNSとかで忙しくて病んでいる様子を見たりすると、どうすれば昔みたいに会えるようになるのかなという話から、本を通じてみんなにメッセージを送りたいという気持ちになりました。

会社の飲み会がいくらつまらなくても、参加せざるを得ないという人は多いと思いますが、お二人の会社はどうですか?

K さん:行かないと「なんでこないんだ」となるので、それがいやでみんな参加している感じですが、僕はほとんど行きませんね。

F さん:うちの会社も「行かないとだめなもの」という認識でみんな参加していますね。僕はつまらないと思った瞬間行かなくなりました。忘年会すら行かないです。
でも僕たちは楽しんでいる人に行かない方がいいよと説得したいわけではなくて、「行かない」という選択肢があることに気づいて欲しいんです。問題意識を持って欲しいというか。

自由な時間がほしいなら通勤や残業より、
飲み会の時間を削減する方が効率的

若者飲み会学を書くにあたって、32名の方にインタビューをされていますが、みなさん、飲み会に対してどんな意識をお持ちでしたか?

F さん:全員のインタビューが終わる頃には会社の飲み会が嫌だと思う理由は、① メンバーが固定している ② 話題が限られる ③ お金と時間がかかる という3つの問題に集約されていると感じました。

K さん:会社の飲み会では思ったことを全部話せるわけではありませんから当然話題が限られますよね。たとえば将来、独立を考えているという話なんかはしづらいでしょうし。
そうなるとどうしても当たり障りのない話題に終始してしまう。

F さん:学生時代の友人でも、過去の話しかしない人はつまらないでしょう。面白い人ってやっぱり前向きというか未来の話が多い。

そういった飲み会を “つまらなくする要素” があるにも関わらず、ほとんどの方が参加するのはどうしてでしょうか。

F さん:インタビューをしてみて、そこまで深く考えていない人が多いという印象でした。
僕は少しでも面白くないと、どう改善して、どう効率化していくかを考えるんですけど、そんな風に頭を使うのが嫌な人の方が大半なのかなと。
行く・行かないの選択肢があるかないかよりも、別にそこまで嫌なわけではないし、誘われてるから行くといった感じ。好きか嫌いに意見がわかれると思っていましたが、それ以前に考えたことがなかったという人が多かったですね。

K さん:でもよくよく話を聞いてみると、「飲み会でこんな嫌なことがあった」という話もポロポロでてきました。あと、会社の飲み会が週2〜3回あって、しかもほとんど朝までコースなのに、毎回参加してそれが普通だと思っていた人もいました。

そのペースだと健康や仕事に支障が出そうですよね。

K さん:本当にそうなんです。で、インタビューで普通の会社はそんなに飲み会をやっていないことを知ると「だったら行きたくないわ」と初めてそこで自分の意思に気がつくんですよ。新卒で入社するとそれが普通だと思ってしまうし、それだけ飲み会が多いと、学生時代の友人に会う時間なんてなくなりますよね。

F さん:学生の頃よりも自由な時間が圧倒的に少なくなって、通勤時間や残業時間を減らす工夫をする人は多いと思いますが、まずは飲み会を減らせばいいんじゃないのっていうのが僕らの主張で、そのことに気づいてもらうのがこの本の目的です。
とはいえ、義務感に駆られて書いたわけじゃなくて、せっかくだからまとめてみようといった軽い気持ちで始めたんですが(笑)。でも僕らは物事を考えたり、つくったりするのが好きだから楽しみながら書いていました。

僕らが飲み会に行かない理由

人生をよりよく、
幸福なものにするために必要なのは “余白”

ちょっと乱暴な質問になりますが、日本中のあらゆる企業から飲み会をなくした方がいいと思いますか?

F さん:みんなが楽しんでいるのであればあってもいいと思います。
地方に異動になった人などは周りに友人もいないでしょうし、息抜きにもなるし。行っても行かなくてもいいという選択肢があるということをわかった上で参加するのは問題ないんじゃないでしょうか。僕もどんな話でもできて、上司がお金を出してくれて、1時間で終わるという条件が揃えば行きますよ(笑)。
誰だってつまらないと思うことに時間やお金を費やすのは嫌だと思いますが、僕やKくんは特に“この程度の楽しさに対して、この時間と金額は合ってないな”という風に考えてしまうんです。わざわざそこに使わなくても、同じ時間とお金で他にもっと面白くて楽しいことができるんじゃないかって。

確かにそうですよね。では、仕事をするうえで、チームワークの形成や円滑なコミュニケーションのために飲み会が必要だという意見に関してはどう思われますか?

K さん:それは勤務時間中にやることでしょうね。仕事中に少しでも時間をとって話した方がお互いのためになるのではないでしょうか。僕は飲み会に行かない代わりというわけではありませんが、自主的に上司と二人で話す時間をつくるようにしています。

F さん:僕は上司と2週間に1回は1on1をやって、しっかりと会話をするようにしています。上司も飲み会に参加しない僕とのコミュニケーションが不足しているとは思っていないでしょうし、先輩との時間も業務時間内で十分取れていると思います。
飲み会で人との距離が縮まるといったことは確かにあると思いますが、アルコールが作り出す場ってすごく緩いんです。本当に仲が良い人とだったらカフェでも家でもいくらでも話していられるじゃないですか。アルコールありきの関係なんて薄いつながりなんじゃないかと思いますし、それがないとうまくまわらないならその程度のチームなんじゃないかと。

なかなか厳しい意見ですね(笑)。でも本質を突いているような気もします。

K さん:僕もFくんがその話をしたとき、本当にそうだと思いました。

F さん:友達でもお酒を飲むという共通点しかない関係だと社会人になると疎遠になりますよね。お酒が手段になるなんてコミュニケーションとして二流なのでは?と思ってしまいます。会社の人たちとの繋がりなんてその程度の緩いものなんだからお酒を使うんだよって言われたらそうかもしれませんが、だったらそれは業務時間内にやってよってなりますよね。

K さん:インタビューに答えてくれた人の中には、業務時間内は仕事に関わる話だけ、人間関係の話は飲み会でするっていう意見もありましたね。

F さん:そういう人にとって飲み会は必要かもしれませんが、職場の人間関係であればそれも仕事の一環ですから、業務時間内にすればいいのにとは思いますね。
結局何が幸せなのかを考えた時に、僕らにとっては何かを生み出す時間を楽しむ人生を送ることなんです。そのためには日々の「余白」をいかにつくるかが大切になってくると思っています。でも幸せの方向性はそれぞれで、そうでない考え方も当然ありますよね。
何も考えないで毎日目の前のことをこなすことで満足していたり、自分でゼロから1をつくるなんてやりたくないし、コミュニティも1つでいい。一緒に頑張っている仲間と仕事終わりに酒を飲んで今日も頑張ったね、明日もがんばろうっていうルーティンで幸せを感じるならそれはそれでいいと思います。そういうコミュニティであれば、飲み会を残すべきかもしれません。

でもそういう人たちは、FさんやKさんが考えるような余白のある人生を知らないから現状に満足しているだけで、そこに気づいてもらいたいという気持ちで本を書かれたんですよね。

F さん:そうですね。余白って大事だよということには気がついてもらいたいです。
僕とKくんは平日18時とか19時に会ってこの本を書いていたのですが、定時に帰ろうとすると、そんな早く帰って何してるのって言われるんです。逆にじゃあ、平日って仕事しかないの?って思ってしまいますよね。
やることなんかなくてもいいんです。やることがあるから余白をつくるんじゃなくて、余白があるからやりたいことをするっていう順番だと思うんです。この意識をもっとみんなに持って欲しい。学生時代の友人たちが余裕をなくしていくのを見て、手遅れになる前に手を打ちたかったんです。

得るものがある飲み会なら参加したい。
大切なのは、選択肢を持つこと。

なるほど。そういった意見があるとは知りつつも、経営者や管理者はチーム強化のために飲み会をやりたいという気持ちもあると思うんですが。

K さん:たとえば、大きなプロジェクトが終わったときに一緒にやってきた人たちと飲んで楽しみたいということは否定しませんが、「チーム強化のため」みたいな目的は後付けなんじゃないかと思います。

F さん:僕たち一度、飲み会っていつ始まったんだろうって考えたことあったんです。
おそらく、みんなで頑張って結果を出した後に“打ち上げしようぜ”ってところからスタートして、それが惰性で続いているんじゃないでしょうか。
いつからか続けるための理由探しが始まってコミュニケーション強化とかチームワークなんて言い出したんじゃないかと思っていて。なんで続けなきゃいけないのかというと、なくす方が大変だからとか、定期的にやっているといいチームだと思えるから、とかそんなところなのではないでしょうか。
でもまあ、仕事の打ち上げということに限れば賛成ですよ。

僕らが飲み会に行かない理由

大きな仕事が終わって、みんなで飲みたいという瞬間はお2人にもあるんですか?

K さん:僕は案件が一つ終わったらお客さんと一緒に飲んだりします。それは仕事の一環だと思っています。次の仕事につながったりもするので。

F さん:1〜2年単位のグローバルなプロジェクトが終わった時に、参加メンバーが各国から日本に集まって、最後のシステムを見送った後の打ち上げは行きました。それは楽しいですし、普段会えない人と直接話せる機会なので、5000円払う価値があると思いました。

費やすお金と時間に見合う飲み会なら参加したい、というのは当然ですよね。「若者飲み会学」でも言及されていたとおり、意味のない飲み会は企業が社員の時間を奪っているという感覚を持たないといけないかもしれません。

F さん:本当にそう思います。以前、社内全体の懇親会の運営メンバーとして招集されたことがあったのですが、もちろん残業代はでません。それはおかしいと思って訴えかけたことがあるんですよ。あと、その懇親会は1年目の新人が中心となって企画や準備をするのが慣例になっていたんですが、それも納得いかなくて。
ただでさえ、たくさんのことを覚えなければいけない新人に丸投げするっておかしいじゃないですか。そのあたりも合わせて主張しました。
結局、運営メンバーはもっと上の人を中心とする体制に変わりましたね。

K さん:それを聞いた時、僕ですらFくんすげーなって思いました(笑)。

最後に確認なんですが、“会社の仕事なんて適当にやって余暇を充実させよう”という考え方ではないわけですよね。

K さん:はい、そういうことではないです。一つのコミュニティだけに属していると、他が見えなくなって、視野の狭い人間になってしまう。会社以外の世界も持っていた方が、絶対に仕事だっていい結果が出せるでしょうから、余白って本当に必要だよってことが伝えたいんです。
だいたい、長時間労働って無理なんですよ。本当に集中していたら8時間が限界というか8時間すらキツイ。朝早くから終電まで働くのではなくて、いいところで切り上げて、自分の好きなことでリフレッシュしてまた次の日頑張る方が建設的ではないでしょうか。

F さん:たとえば、中小の部品製造会社が大手自動車メーカー1社のみと取引している場合、「ちょっと安くしてよ」なんて言われたら断れないじゃないですか。その身動きができないホールドアップ問題が個人で起こるべきではないと思うんです。
会社にのめりこんで、そこしか知らない状態だと身動きができずに会社の言いなりになってしまう。その状態で20代を過ごしてしまったら、30代以降もそこでしか働けなくなる。
先回りして問題を解決していくことが個人の幸せに繋がると思うので、そのために余白を持つということは1つのソリューションになり得るんじゃないかと思います。結局それぞれ自分の幸せが一番大切ですから。

K さん:そのためには疑問を持つことって絶対必要だと思います。そもそも残業なんて無くて当たり前って考えるべきですし。

F さん:僕も彼がいたから自分の考えをアウトプットできる場があったし、疑問を持つことができたんです。だからこそ、会社の外にコミュニティは絶対必要だし、そのコミュニティを保つためにはやっぱり余白が必要なんですよね。

Fさん、Kさん、どうもありがとうございました。

聞き手:井澤 博(宣伝ファクトリー) 
文:和谷 尚美(N.plus)
取材日:2019年3月17日

若者飲み会学: 若者が会社の飲み会を嫌う理由

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